長崎大学病院 国境を越えた地域医療支援機構

機構長メッセージ

長崎大学病院へき地病院再生支援・教育機構国際医療人育成室長 有吉紅也
長崎大学病院
国境を越えた地域医療支援機構長
有吉 紅也
熱帯医学は地域医療;
グローバルヘルスと平戸市のコラボレーション
私は、かねてから熱帯医学とは地域医療だと思ってきました。これらが深く関係している理由にはふたつあります。

ひとつは、地球規模で保健医療を思考・実践するグローバルヘルスも、対象とするのは地球上に無数に散らばる多種多様な地域医療の集合体だからです。もうひとつは、グローバルヘルスが目標とするのは、「世界中の人々が公正に健康な社会の実現」であり、国内の医療格差は、医療過疎・へき地病院に歴然と存在しているからです。

ですから、日本を拠点にして国際医療に携わろうとする医療従事者が、日本で地域医療の担い手になろうと思うのは、とても自然な流れだと思います。今回設置された国際医療人育成室は、そのような国境を越えた地域医療に貢献したいという医療従事者を支援する、長崎の地方自治体と長崎大学が協働して運営する新たな制度です。

一方、この制度は、海外で医療をやりたい人の単なる身分保障ではありません。海外で活動するひとたちへの後方支援は、もちろん国際医療人育成室の活動の柱ですが、もうひとつの柱は、仲間と一緒になって、日本のへき地医療がかかえる医療格差の問題にどうやって立ち向かうのかを考え、その解決に向けて実践することにあります。

私たちは、拠点を長崎大学と連携することで、熱帯医学研究所や熱帯医学・グローバルヘルス研究科、長崎大学病院感染症内科や総合診療科、さらには、長崎大学病院救命救急センターに新たに創設された救急・国際医療支援室と協力して、医師としてのより自由で多彩なキャリア形成を支援できます。

海外での医療活動と平戸市の地域医療の双方に腰を据えてかかわることで、日本の地域医療が、そして海外の地域医療が自分の言葉で語れる。そんなグローバルドクターが平戸から輩出されることを切に願っています。

平戸は、江戸時代初期に日本と西洋文化の橋掛けに尽力したウイリアム・アダムス(三浦按針)が1620年5月16日に没したゆかりの地でもあります。没後400年に創設されたこの育成室とのつながりを感じます。

2020年7月6日

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