飛田 哲志 (公益財団法人 日本生命済生会付属 日生病院)
飛田 哲志 | |
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公益財団法人 日本生命済生会付属 日生病院 平成30年2月1日~平成30年2月28日 (平戸市民病院) |
住み慣れた大阪を朝に発ち、列車やバスを乗り継いで平戸市民病院に到着した頃には、もう日が沈んだ後でした。明かりの多い都会と違ってどんどん暗さを増してゆく病院周辺の景色を見ながら、四週間に及ぶ研修に対して期待と不安を抱いていました。
研修内容は外来や病棟担当だけでなく、健診・訪問看護・訪問診療など多岐に亘っていました。患者さんの住んでおられる自宅を訪ねて診療を行うという経験は初めてでした。病院と違ってできる診療は限られるものの、生活の場を目にすることで、患者さんの抱える社会的な問題に対してアプローチしやすくなると感じました。加えて、訪問という形をとると、「なるべく自宅で過ごしたい」という患者さんの願いに沿うことが可能になる点も新たな発見でした。
他職種の方と一緒に仕事をする機会も豊富でした。今までは介護に関する知識が乏しく、患者さんの退院後の生活を具体的にイメージできませんでした。しかし、介護に関する保険制度や現状をケアマネの方に教わり、一緒に施設に足を運ぶと、患者さんのことを退院後も含めて長期的な視点で考えていく必要性を感じました。
新たな発見は研修で教わることだけではありませんでした。高齢化は全国的な問題ですが、平戸をはじめとする地方では人口流出による過疎化も大きな問題となっています。市内を車で走ると、閉店した店舗や閉鎖した施設を見かけれことが何度かあり、今年度末をもって複数の小学校が閉校になることも聞きました。過疎化は都会では見えづらいですが、地方が抱える問題を考えるきっかけになりました。
しかし、平戸の魅力も味わいました。休日は比較的時間に余裕があったので、市街地へおいしい魚介類を食べに出かけ、晴れた日には生月島や平戸の山間部にも足を伸ばし、海へと広がる絶景や満天の星空を眺めることもできました。自然に恵まれた平戸を堪能したことは、ずっと忘れないと思います。
研修医二年目も終わりに近づき、多少のことは学んだ気になりつつありましたが、新たな発見に満ちた平戸での一ヶ月を過ごして、医師としての経験の浅さに改めて気づかされました。最後になりますが、とても忙しいにもかかわらず丁寧にご指導下さった病院のスタッフの方々、そして不慣れで未熟な若造を温かく迎え入れて下さった市民の皆様、本当にありがとうございました。