谷口 彩香 (横浜市立市民病院)
谷口 彩香 | |
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横浜市立市民病院 平成30年2月5日~平成30年3月2日 (平戸市民病院) |
平戸市民病院で1ヵ月間の研修をさせて頂きました。
日本の中でも、高齢化率が高く「20年先取りした医療」を展開する平戸市。その中心に位置し、地域包括医療の中核を担う平戸市民病院における研修を通じ、私は地域に根差した医療、介護との結びつき、多職種連携の必要性と難しさを学びました。
まず私は、来院する患者さんのほとんどが「どこそこの誰々さん」「誰々の娘さん」など、先生にも看護師さんにも顔の知れた人ばかりであることに衝撃を受けました。恥ずかしながら、私は1ヵ月前まで受診される方々をあくまで「患者さん」としか見ていませんでした。病院内での治療ばかりに気を取られ、彼らが「患者」である前に、自立して生活を営むひとりの「生活者」であることを、本当の意味で理解出来ていなかったように感じます。しかし、研修中に訪問診療・訪問看護・訪問リハビリ等でたくさんの方々のお宅に伺い、一人ひとりが何を大切にし、どんな生活を送ってきたのかを目の当たりにする中で、皆さんが一時的に患者として医療機関を利用しているに過ぎないことを改めて実感しました。それぞれに生活背景があるという当たり前のことが、自分の視野から抜け落ちていたことに気付かされたのです。
そして、その生活背景をのぞかせて頂くと、「医療や介護が必要な状態となっても、できる限り住み慣れた地域で安心して生活を継続する」ことを目標とした、各方面からの支えを見ることができました。ある患者さんのケアプラン検討会議では、患者・家族を交え、ケアマネジャー・訪問看護師・デイサービス・リハビリ・介護用品担当者など多職種の方が参加され、多角的な視点を垣間見させて頂きました。医師の立場では、介護上で障壁となりうる疾患特性などを共有し、「適切な時に、適切な専門職につないでもらう」ことが重要と感じました。その点、主治医意見書などは特に有用な手段であり、有効に活かすための記載のコツまでも学ぶことができました。
限られた人数・時間で診療をこなす忙しさの中で、毎回一人ひとりの生活背景を理解した上で医療を行なうというのは、なかなかに難しいとも感じました。その意味でも、他職種から与えられる情報は非常に重要で、それを引き出す事も医師の役割と思います。この1ヵ月で、あらゆる職種の業務・視点に触れ、実際にその視点に立つ機会を頂けたことは、各職種の専門性を理解する上でも、とても意義深いものでした。平戸で学んだことを忘れずに、地域人の生活を支えるチームの一人として、今後の医療にも積極的に取り組んでいきたいと思います。お忙しい中でも温かく受け入れてくださった関係者の皆様、そして患者様に心より感謝いたします、本当にありがとうございました。