初期研修医

角井 健太 (医療法人社団 神鋼会神鋼病院)
角井健太 角井 健太
医療法人社団 神鋼会神鋼病院
平成21年5月18日~平成21年5月29日
(平戸市民病院)

 この度地域医療研修として、平戸市民病院にて地域包括医療について学んだ。普段我々は主に急性期医療の現場におり、特に我々研修医は予防やその後のフォローアップに関わる機会がほとんど無いため、今回の研修は非常に有意義なものとなった。
 神戸市とは異なり、平戸市では医療サービスの供給基盤や交通網の整備が不十分である。また高齢化率が32%と非常に高く、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の罹患率が高い。このような環境の中では、急性期医療は当然のことだがそれにも増して予防的医療が重要となる。
 予防については大きく一次予防・二次予防・三次予防に分けられるが、平戸市民病院では急性期医療と並行してこれらを全て行っている。一次予防としてはメタボリックシンドロームなどに対する啓蒙のための出前講座を月二回行っている。一度参加させて頂いたが、高齢者にも理解しやすいように寸劇を取り入れるなどの工夫がされており、健康に関心をもってもらうためには非常に効果的であると思われた。二次予防としては積極的に住民健診を行っている。島内に診療所しか存在しない度島での健診に二日間同行させて頂き、実際に数十人の診察を担当したが、検査機器のない環境での診察の難しさを身をもって認識することができた。また、この健診で早期胃癌が見つかり手術することができたという患者から直接話を聞くことができたことは貴重な経験となった。三次予防としては、訪問診療・看護・リハビリを行っている。上述したように高齢化率が高く、また交通網の整備も不十分であるため寝たきりの患者などはなかなか医療機関を受診することができない環境にある。そういった環境のなかでこちらから出向くことにより褥瘡や拘縮などを防ぐことができ、また重症化する前に介入することができる。実際に訪問してみると、診療・看護・リハビリのどれも本質的には変わらない事が分かり、チーム全体で包括的にケアすることが重要であると思われた。
 上記の活動による効果についてのデータもいろいろと提示して頂けたが、その効果は明らかであった。しかしこれらは医療従事者の献身に依存している部分も多く、地域包括医療の発展のためにも行政の支援が更に必要であると思われる。
 平戸市民病院での研修を終えて、介護保険制度などこれまであまり関心を持つことがなかった分野について深く考えることができたことは非常に良い経験となった。今後はまた急性期医療中心の生活となるが、平戸市民病院の様な環境の現場もあるということを体験することが出来たことは今後の大きな糧になると思われる。