初期研修医

澤 健一 (社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 済生会長崎病院)
澤 健一 澤 健一
社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 済生会長崎病院
令和3年1月4日~令和3年1月29日
(平戸市民病院)

 1ヵ月の平戸市民病院での地域医療研修をさせて頂いて誠に有難うございました。コロナ禍であり、長崎の中心部からの受け入れをして頂いたことにも深く感謝申し上げます。まずは自己紹介から致します。出身地は長崎県東彼杵町というお茶とクジラが有名な田舎町です。父親は同町の地域医療に従事しており、その後ろ姿を見ながら、幼い頃はよく院内を探検していたことを思い出します。高校は青雲高校にて寮生活を行いまして、長崎大学医学部にて医学を学ばせて頂きました。現在は済生会長崎病院にて研修医として勤務しており、日々充実した研修医生活を送っています。
 平戸に来るのは、今回で4回目となります。もともとは長崎大学医学部地域推薦枠での入学でしたので、大学1年生の時に平戸を数日間研修させて頂いて、中桶先生や度島さんにはお世話になりました。チャンポンを食べ、平戸城を眺めた記憶があります。2回目は大学4年生の時に友人との観光で来訪し、人津久海水浴場や川内峠、田平天主堂を回りました。3回目は昨年度の平戸サマーキャンプにて、平戸市民病院でワークショップや講演会、BBQなどを通して平戸を含めた地域医療に携わる方々と交流する機会がありました。実際に1カ月間平戸に住んで研修医として働くことで、これまでのへき地医療に対するイメージを遥かにしのぐ経験ができました。
 今回の研修で感じたことは、平地市民病院が紐差以南の地域全体を支えており、救急医療から外来、そして在宅医療までを一手に担っていることです。長崎市内から来院する際に、平戸大橋を渡るとそこはもう平戸だと思っていましたが、平戸市民病院までの道のりで完全に覆されました。18㎞の山道であり、車で20分以上かかり、しかも高速道路の終点である佐々ICからは40㎞あり、1時間近くを要します。訪問診療での最終地点である宮ノ浦漁港付近までは、平戸市民病院から22㎞(30分近く)であり、この間に入院施設のある医療施設はありません。その中で、訪問診療・訪問看護・訪問リハなどの自宅を中心とするサービス、デイケア・デイサービスなどの施設を中心とするサービスをそれぞれの患者さんに合わせたスタイルに寄り添って、医療が行われていました。救急治療でも必要とあらば、ドクターヘリなどを使った高次医療機関への搬送も行われており、遠い病院ができる限り身近な存在になっていると感じました。また、外来中に患者さんだけでなく、医療スタッフ側さえもバスの時間を気にする事が非常に多かったことも印象に残っています。車を持っていない患者さんは、1日の運航している本数の少ないバスを利用して来院・帰宅をしているため、カルテにもバス利用などのメモが残されており、生活面の把握が重要であることが表れていました。普段の長崎市内での救急医療とは異なり、困っていることへの解決策の提案や解決に繋がる事業への紹介など、地域と密接に繋がった医療への対応が求められており、今後の働く場所によって柔軟な医療対応が必要であることがわかりました。
 最後になりますが、一か月間という短い間でしたが、貴重な経験をさせて頂いた平戸市民病院の皆様、本当にありがとうございました。今回の経験は今後の医師を続けていく上で大きな財産となりました。