初期研修医

小野 正人 (独立行政法人 労働者健康福祉機構 横浜労災病院)
小野正人 小野 正人
独立行政法人 労働者健康福祉機構 横浜労災病院
平成27年1月5日~平成27年1月30日
(平戸市民病院)

 2015年1月より1か月間、平戸市民病院で地域研修をさせていただきました。北海道室蘭市(人口約10万人)で生まれ、幼少期に横浜市に移住後は大学時代(北海道大学→札幌市180万人)を含め大都市にしか住んだことはありませんでした。そのため平戸の何もないこと、夜の暗いことには驚きました。しかし、皆さんが優しく接してくださったため、寂しさも感じずにあっという間でした。
 地域医療と聞くと、医療資源が限られている、過疎化・高齢化が進み医療の提供が困難であるなどと言われており、それらのことは今回の地域医療で体感しました。これらの問題に関しては、福祉の手を導入することなどで対応していますが、まだその制度が現場の現状に必ずしも即していないことや、不足していることを実感しました。それでも職員さんがそれぞれの最大限の活動を積極的にされていて、医師だけでなく従事者全体で現状を良くしようとする姿勢に力強さ・頼もしさを感じました。
 医療資源が限られているために、発症前に予防することも重要と考え取り組んでいる先生方の活動にも触れました。都会と比べて比較的少数の住民を相手にするため、住民全体に働きかけることの効果は都会よりも大きいと考えます。都会と違って住民の結びつきも強いため、口コミ(井戸端会議、立ち話)でも医療知識の伝達が可能ではないかと考えます。このような方法がとれる、試せるのも地域ならではの魅力と感じました。生活習慣病を扱う診療科を専攻する私にとっては特に、予防への取り組みの重要性は常日頃考えていましたが、今後実践できることがあればぜひ実践したいと思いました。
 もっとも感慨深かったことは、生活の場を考えながら診療にあたることの大切さを学べたことでした。どこに住んでいるのか、どなたと生活しているのか、どんな仕事をしているのか、どんな楽しみがあるのかなどを知ることで、検査異常値など以上にその人が困っていること、解決しなくてはならないことがわかり、医療の押し付けではなく患者さんのための医療が提供できることを再認識できました。今まではとかく異常値、所見に対する治療をひたすら考えていた自分が恥ずかしくなりました。このように病ではなく、病を抱えた人間をみることは大切ですが、生活を知るための情報収集のアンテナのはり方、アンテナの感度などは医師の人間性によることも実感でき(ベテランの先生方は容易にやっておりましたが、私には難しく不完全でした)、医学のみならず人間性を養うことも重要と考えさせられました。
 この1か月、医療はもちろんのこと、人間・社会としての面でも大変多くのことを学ばせていただきました。毎日盛りだくさんで楽しかったです。神奈川・横浜に持ち帰り、今後の糧として日々いかしていきたいと思います。よそ者と思わずに診察させて下さった患者さん、支えてくださり様々なことを教えてくださった先生方・職員の方々、お食事や釣り、その他会話などで交流いただいた平戸の皆様には心から御礼申し上げます。どうもありがとうございました。