初期研修医

村田 紡 (独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院)
村田 紡 村田 紡
独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院
令和元年12月2日~令和元年12月27日
(平戸市民病院)

 12月2日から12月27日まで平戸市民病院で地域医療研修をさせて頂きました。横浜労災病院では、急性期疾患の入院患者さんや救急外来を受診する患者さんに接することばかりなので、平戸市民病院での経験は新しい発見の連続でした。
 第一に、先生方が専門分野に関わらず様々な疾患を扱っていました。都市部の大病院では医師の人数も多く、疾患毎に各科に患者さんが振り分けられ、医師は基本的に自身のスペシャリティに精通していればある程度の診療を施すことができます。しかし平戸市民病院では、他病院からの紹介状を持たずに、様々な主訴を持った患者さんが来院し、適切な検査によって診断をつけ、加療を施さなければなりませんでした。医師は幅広い知識を持ち合わせていなければならず、現に、内科の医師が接触性皮膚炎の加療から胸腔穿刺まで、様々対応していたことが印象的でした。
 第二に、平戸市民のかかりつけとして、慢性期管理を行っていました。横浜労災病院では急性期の病態を脱した患者さんは地域のかかりつけ医に逆紹介をするため、慢性期の患者さんの外来研修には今回初めて携わりました。患者さんは定期受診で医師と話すことを楽しみにしており、身体症状に関する相談はもちろん、家族の介護や最近の仕事のことについてまで時間をかけてお話していて、地域医療ならではの光景を拝見できました。
 第三に、訪問診療に対応する地域の広さに驚きました。平戸市は住宅が密集しているわけではなく、南北に伸びる島に住宅が点在しており、また道路の整備されていない細い坂道の上にあるような住宅も多くありました。そのような場所に居住する高齢者は、医療を必要としていても通院が困難であり訪問診療の対象となっていました。都市部と違い訪問診療に取り組むクリニックなどもないため、平戸市民病院が平戸の訪問診療を一手に引き受けていましたが、対応地域が広く、医師数も限られているため、半日に3件程度しか訪問できないという現状を知ることができました。
 平戸市は、都市部と比較して少子高齢化が進んでおり、日本全体の20年後の人口モデルであるとのお話を伺いました。そのような場所の医療を経験できたことは私の中で大変貴重な体験となり、平戸市民病院での取り組みや医療の現状を、日本中の医療従事者や医療改革に携わる人々が知る必要があると感じました。
 最後になりましたが、私たち研修医を仲間として迎え入れてくださった、先生方、コメディカルスタッフ、事務の方々に心より感謝致します。お忙しい中で私の診療に対してご指導してくださったり、休日に訪ねるべき長崎の名所を教えて頂いたり、美味しいお刺身を食べさせて頂いたり、忘れられない1ヶ月になりました。ありがとうございました。