初期研修医

舩原 光真 (長崎大学病院)
舩原光真 舩原 光真
長崎大学病院
令和3年3月1日~令和3年3月31日
(平戸市民病院)

 初期研修1年目の3月に平戸市民病院で研修をさせていただきました。私が地域医療について初めて勉強したのは大学3年生の医学ゼミで地域医療を選択した時でした。その時に中桶先生と出会い、地域医療とは何かと考える機会を与えていただきました。他職種の方からのお話や実際に地域医療をされている先生方からのお話や考えに触れてとても楽しいゼミだったのを覚えています。研修医になったら必ず平戸市民病院で地域研修を行って、地域医療の実際を目にしたいと思っていました。そして、新型コロナが日本中に流行された頃に研修医になった私は、地域研修病院を大学に提出する際に学生の頃の思いを胸に平戸市民病院を選択しました。  しかし、研修初日は医者になって1年間で自分がどれだけ進歩したのか、1年間で学んだことは地域医療でも有効なのかなどなど不安な気持ちで胸いっぱいになりながら平戸病院の入り口をくぐったことを覚えています。そんな気持ちも初めだけで、実際に実習が始まってしまえば地域医療の難しさや楽しさに夢中になって不安な気持ちはあっという間になくなっていました。
 平戸市民病院での研修は大学病院では学べなかったことだらけでとても充実したものとなりました。健康診断や腹部エコー、外来診療、当直など様々な研修をやらせてもらいましたが、研修内容で一番印象に残っているのは訪問診療でした。様々な理由で病院に来ることができなくなった方の家にお邪魔して診療を行っていくのですが、その時に家の雰囲気や家族との会話などから病気以外の患者背景を多く知ることができました。今までは病院にいる患者の姿だけを見て患者を理解していたつもりになっていましたが、訪問診療で実際に目にすることで全ての患者にはそれぞれの家族や家があって、その多種多様さは自分の予想を超えてくることがたくさんあるんだということを考えさせられました。研修中に押淵院長からお聞きしたお話が印象に残っています。その内容は、「周りに他の家がない山奥に1人で暮らしている高齢者が利き腕を骨折した時に、ギブスだけを巻いて帰したら家で過ごせなくなるということを考える必要がある」というものでした。恥ずかしながら今までの研修では患者が家に帰ってからのことなどほとんど考えていなかったので、ハッとさせられたのを覚えています。平戸市民病院での研修を通して、普段の診療から患者の背景を気にしながら、その患者に適切な医療を提供していく大切さを学びました。
 研修医1年目の最後を平戸市民病院で終えることができたことは大きな財産になりました。ここで学んだ患者背景を考えて医療を提供する大切さを忘れずに今後も精進したいと思います。最後になりましたが、押淵院長をはじめ、中桶先生、度島さんや平戸市民病院の職員の皆様、そして一緒に研修を行った佐藤先生、福﨑先生、1ヶ月間の本当にご指導ありがとうございました。