初期研修医

領家 永遠 (医療法人社団 神鋼会神鋼病院)
領家永遠 領家 永遠
医療法人社団 神鋼会神鋼病院
平成21年8月31日~平成21年9月11日
(生月病院)

 地域医療として、長崎県平戸市立生月病院にて2週間研修させていただきました。
生月島には約8000人の人口が在住し、島唯一の総合病院として生月病院は地域の中核病院です。外来患者数  入院患者は約60名弱、入院患者の平均年齢は79歳という高齢者の患者様の多い病院です。それに対し医師数は5名という医師不足の中、地域に根付いた医療を行っています。
 特別養護施設への回診や、在宅医療への往診など地域の住民の方々と密接に携わっている医療を医師として初めて経験しました。患者様だけでなく、その家族へのケアも行っており、医師と患者という関係だけではなく、島の仲間であるという強い絆を感じました。
 特に心に残った地域医療として、「第11大栄丸」沈没事故の被害者に対するケアです。この海難事故は2009年4月14日平戸市沖で第11大栄丸が高波に遭い遭難、漁船員12人が未だ行方不明となっている事故です。船員は全員生月島の住民で、生存者は10名でした。
 事故後生存者は生月病院に入院しました。幸い全員身体的には軽症であり、退院可能であったそうです。しかし、こういった事故後はメンタルケアが重要であると山下院長の判断の下、10名全員を引き続き入院加療とし、3週間共に過ごしていただいたそうです。同じ経験をした仲間と苦痛を一緒に乗り越えるといったメンタルケアの一環です。またメンタルケアを事故後3日目から開始するという迅速な対処を行ったそうです。
 事故から半年、今も精神福祉により1ヵ月に一回被害者への心のケアを行っていますが、現在PTSDは一人も出ていません。
 また行方不明となっている家族に対する精神的ケアも行っています。精神的ショックを受けた被害者は一般的に引きこもってしまう傾向にありますが、それを地域住民が訪問し、早期に本人の苦痛に気づいてあげる、とういう島全体でこの事故に対する被害者を癒していこうと取り組んでいる姿を目の当たりにしました。
 徐々にではありますが、被害者全員が事故から立ち直ろうとしています。
 精神福祉の精神科医、山下院長を初めとする生月病院スタッフ全員で現在もケアを続けています。
 地域医療は医療スタッフだけでなく、島民全体で医療に取り組んでいる印象を受けました。2週間という短期間に大変有意義な研修を行え、様々な貴重な体験ができたことにとても感謝しております。
 山下院長、鈴木先生、田中先生、中本先生、小村先生、看護師の皆様、事務の方々、また研修医である私を暖かく迎えてくださった島民の皆様本当にありがとうございました。