初期研修医

二階堂 有加 (社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院)
二階堂有加 二階堂 有加
社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院
平成28年2月1日~平成28年2月25日
(平戸市民病院)

 静岡市から、新幹線とバスを乗り継いで平戸桟橋に到着。そこから平戸市民病院へ向かうバスに乗り込んだものの、ひたすら曲がりくねった山道を進み、車窓に目をやれば霞かかった森しか見えない。こんな辺鄙なところに本当に“市民病院”があるのだろうかと、バスが進むほどに私には不安ばかりが募っていった。
 平戸市民病院は確かに存在した(←失礼)。夜の淋しい印象から一転、日中は多くの患者さんで待合が賑わっていた。医師の人数こそ少ないものの、各専門分野を中心にalmightyな診療が行われており、健診や地域に出向いての医療講座等、予防医学の観点からも精力的に活動されていて、まさしく地域に根付いた病院といった印象を受けた。
 訪問診療や離島診療所では、より地域の方々や患者さんの生活に寄り添った医療がなされており、用いられる知識や技術こそ最先端が導入されていても、どこか“昔の時代の診察風景”を想起させる空気を纏っていた。ここに医療の原点をみた気がする。
 “医学”を学んできた我々は、どうしても“疾患”に目が向き、病気を見つけては治療しようとする。しかし、本当に診るべきは病気を抱えた“人”であるのだと、改めて感じた。誰のための医療なのか、何が正解なのか、時々わからなくなることがある。
 少しばかりモヤモヤした気持ちを抱えたまま、私は静岡に戻る。この平戸の地で、多くの人と出会い、時に現代のへき地医療の現実を目の当たりにし、様々な考えに触れたことは、私の人生において貴重な財産となるだろう。

 平戸市民病院の先生方、スタッフの皆様、そして平戸市の方々、本当にありがとうございました。