初期研修医

小原 真奈 (独立行政法人 労働者健康福祉機構 横浜労災病院)
小原真奈 小原 真奈
独立行政法人 労働者健康福祉機構 横浜労災病院
平成27年8月31日~平成27年9月25日
(平戸市民病院)

 一か月間、平戸市民病院で研修させていただきました。京都生まれ、大阪と横浜で育ち、田舎暮らしをほとんど経験したことがなく、バスの中でみた永遠に続く道と周りの田んぼの風景、初日の夜中に病院にたどり着いた時の衝撃は忘れません。
 この一か月での研修で特に印象的だったのは、外来診療と地域の雰囲気を味わえた訪問診療でした。外来では一見雑談のように聞こえる内容の会話も、実はその患者さんとのコミュニケーションを通じてささいな変化がないか見る大切なもので、外来診療はそういった変化に気付く繊細さや敏感さが問われることを実感しました。また、患者さん本人だけでなく、家族や生活などの社会背景をここまで細かく把握して診療が行われているのは、初めて目にした光景でした。また、実際に患者さんの自宅に出向く訪問診療・看護は全く初めての経験でした。その中で毎回感じていたのは、なんで敢えて急な坂を上った所や病院からこんなにも遠く離れた不便な所に住んでいるのかということです。しかし、訪問診療を通じて実際にその人が暮らしている家の中の雰囲気や家族、家の周りの畑や飼っているペットなどの生活環境を目の当りにし、医療がその人の生活の中心なのではなく、あくまでその人の生活の中心は長年暮らしてきた自宅や家族、その他の生活環境そのものであって、医療はその人が長年暮らしてきた地で健康に幸せに暮らすための手助けに過ぎないことを感じました。私が今までの研修で見ていたのはあくまで入院中のみの皆一通りの光景にすぎず、退院後にはひとりひとりの生活そのものがあることを再認識しました。この訪問診療が一か月間で一番地域医療らしい一面を感じたものでした。
 わずか一か月間でしたが、多くの先生方・看護師さんを始め病院スタッフの方々、平戸の皆様に心から感謝致します。医療以外においても、平戸の自然や歴史、美味しい食べ物など素敵な出会いがたくさんあり、非常に充実した一か月でした。来年からは専門分野での診療が中心となりますが、ここで培った経験や思い出は今後の医者人生にとどまらず、私の人生におけるかけがえない宝物であると感じています。ありがとうございました。