初期研修医

木谷 聡一郎 (社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 済生会長崎病院)
木谷聡一郎 木谷聡一郎
社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 済生会長崎病院
平成29年5月1日~平成29年5月31日
(平戸市民病院)

 平戸市民病院での研修は想像以上に楽しく最高の一ヶ月でした。
 私は、長崎生まれ長崎育ちではありますが、平戸に来るのは2回目でした。去年Summer Campに誘っていただき参加した時が1回目です。2泊3日で先生方の地域医療に関するお話を聞いたりワークショップを行ったり訪問診療に行ったりしました。千里ヶ浜海水浴場の目の前の蘭風という平戸にしては大きく豪華なホテル(若干、失礼ですが)に泊まり、温泉に入り、バーベキューで非常に美味しい平戸牛を食べたりと至福のひとときを過ごさせていただきました。まだ話したいことは多々ありますが、そろそろ本題に入ります。
 4月30日、長崎市内から車で3時間超かかる遠い遠い平戸市民病院の宿舎に前日入りしました。5月1日初日の朝、医局の自分の机に座っていると、後ろから「おはよう」となんか聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くとなんとその人は長崎大学時代の同期だったのです。大野恵理子先生です。ついつい「小嶋さん!」と言ってしまうのですが、結婚し名字が大野に変わっていたから事前に分かりませんでした。知り合いがいて少しホッとしていたところに結構序盤からキャミイと呼ぶようになる明るく元気なギャル上井廉絵先生が現れました。この3人で1ヶ月の研修が始まりました。
 研修内容としては、まず8時半頃から健診をし、午前は新患外来または内科外来につくことが多かったです。午後は訪問診療・訪問看護、ケアマネ訪問、放射線技師さんについて放射線実習、臨床検査技師さんについて検査部実習をさせていただきました。1日間フェリーで度島診療所にも行かせていただきました。
 新患外来では、一人でやらせていただくこともでき、平戸ならではの幅広い疾患を経験できました。特に印象に残ったのがマダニ咬傷でした。1ヶ月間で6例みました。マダニがついてる人もいれば、とって瓶に入れて生きたマダニを持ってきた人、マダニはおらず刺し口のみある人などさまざまでした。処置の仕方、潜伏期間を考えマダニ媒介性感染症を考慮にいれた患者さんの帰し方を学びました。中桶先生が持っているマダニリムーバーというマダニをとる器具があることも知り驚きました。(Amazonで購入できるのでぜひ!)また、普段は当直帯に小児を診る機会はないのですが、耳鏡を使って急性中耳炎を診ることができたのも収穫でした。
 訪問診療・訪問看護では、患者さんの笑顔がとても印象的でした。ある家ではADLを維持するために家が改造されベッドのそばにトイレがあり、その間には手すりがありました。ある家では、裁縫が得意で趣味にしている患者さんから小銭入れとポーチをいただきました(大事にします!)。ある家では、まだ2回目の訪問なのに「もう何十回も会ったみたいな感じ、また来てくださいね」と言ってくださったりしました(非常にうれしかったです)。ある家では、医療に対して不信感がある両親にどう対応するかという問題に深く悩まされました。さまざまな対応の仕方があり、答えはないと思うのですが、患者と医療者のコミュニケーションといった医療倫理の部分も中桶先生から本を借りて勉強することができました。何回か行かせていただきましたが、病院より自宅の方がその人らしくいれる気がしました。ただ、そのためには家族や周りのサポートが必要であり、中にはそれが難しい家庭もありました。医師としては、在宅でできることは限られるので症状に応じてためらわずに病院受診(入院)の判断をすることが大事と思いました。一度診た患者さんを最後までみれるのは魅力的であり、患者さんが在宅を望んでいるのであれば, 最後まで笑顔でいられるようにサポートしたいと思いました。
 放射線実習では、胸部レントゲン、頭部CT、胸腹部CTの撮影方法を教えていただきました。今までは当直帯も放射線技師さんが常駐していたので自分でやることはなかったが、実際にやらせていただくと、どのように撮っているか、画像を再構成しているかがわかるので技師さんの気持ちを考え、オーダーしようと思いました。
 検査室実習では、お互いに採血し、血算・生化を測定したり、眼底写真撮影をしました。位置合わせが難しく、おもしろかったです。珍しいATLの血液標本を見せていただいたり、グラム染色をして観察したりしました。
 度島診療所では、羽田野先生というもともと外科の先生と看護師さんにお世話になりました。朝から釣りに行った後診療をされていました。度島では小児も診ないといけないということで週に1回平戸市内の病院で小児科の勉強をさせていただいたり、ビデオ教材を見ながら勉強しているそうでいまだ衰えないその向上心に尊敬の念を抱きました。診療所は、2階建てで保育園の隣にありました。受付、診察室、処置室、レントゲン室、エコー・心電図室、ウォータープール室がありました。電気治療を行なっている患者さんが多くいられました。昼食は近くの旅館で大量の美味しい食事をいただき本当にありがたかったです。島に一つ診療所があることで島の人々が安心して暮らせているのは間違いないと思いました。
 最後になりますが、中桶先生をはじめとした先生方、度島さんをはじめとしたさまざまなサポートをしてくださった方々、病院内の職員の方々、そして一緒に研修した2人に心から感謝しています。一ヶ月間最高でした、ありがとうございました。