初期研修医

長谷川 哲雄 (独立行政法人 労働者健康福祉機構 横浜労災病院)
長谷川哲雄 長谷川 哲雄
独立行政法人 労働者健康福祉機構 横浜労災病院
平成24年12月3日~平成24年12月28日
(平戸市民病院)

 一か月間お世話になりました。九州上陸自体が僕にとり初めての体験でしたが、曾祖父が平戸で生まれ育ったため僕の一部の遺伝子にとっては実に100年ぶりの平戸上陸となりました。都会で全人生を送った僕にとり未経験の地域実習でしたが、曾祖父の血が騒いだのでしょうか、この4週間は忘れ難い時間となりました。
 まず学んだ事は、医療の幅の広さを実感し医療人としての多角的視野を構築することです。これまで治療を主体とした医療のみに携わって参りましたが、地域医療を通じ医療が一次予防から三次予防まで、そして院内のみならず院外でも提供されるものであることを実感致しました。同時に訪問診療を通じ患者の生活背景を考慮した全人的医療の実践や、一次予防による要介護者減少により介護保険料・医療費を抑制するという医療の社会的側面にも平戸市民病院の取り組みを通じ触れることができました。
 そしてもう一点は、人生の価値観の多様性です。都会生活は多くの娯楽、情報、刺激を享受することができますが、これらが本当に自分にとって大切なものなのか。平戸での一か月間はその問いを投げかけてくれる時間でした。医療者が大部分の患者の顔を見るだけで家族構成、生活背景、住所まで認識できる大きさのコミュニティーでは、社交辞令のない家族間のような暖かい会話、深い思いやり、心からの慰めの言葉が医療者患者間でやり取りされています。人と人との距離が近いことでコミュニティーに属する全員が一つの家族としてまとまり、支え合い関わり合う。「無関心」が存在しない。そして気付くと自分もすれ違う人皆に挨拶をし、人との距離を縮めていることに気付く。
 一か月という時間はただ漫然と過ごすには長く、意欲的に決めたテーマを学習するには短い時間かもしれません。しかし平戸で触れ合った方々の一つ一つの会話、表情、些細なやり取りから見える精神的寛容さ、快活さと接した経験は、いかなる知識よりも自分にとって深い財産となることを確信しております。
 短い期間ではありましたが、お世話になりました病院スタッフの皆様、平戸市民の皆様に心から感謝申し上げます。有難うございました。